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朝ごはんをちゃんと食べると偏差値の高い大学に入れるし、将来年収も高くなるかもしれないというお話

のっけから突拍子のないことをいうと思わないで下さいね。要は、子供の脳の発達には朝ごはんが欠かせないということです。

東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が農林水産省と共同で行った調査によれば、毎日朝食を摂る人の50%以上が第一志望の大学に合格できたのに対し、朝食を摂らない人の30%以上が第三志望以下の大学にしか合格できなかず、統計学的に有意であったとのことです。また、卒業時期にも、朝食を摂る習慣のある人の6割が第一志望の会社に就職できたのに対し、朝食を取る習慣のない人の3割が第三志望以下の会社にしか就職できなかった、さらに35から44歳のサラリーマンを対象に行なった調査でも年収1000万以上の人では、82%が毎朝朝食を摂っている(朝食を摂らない人は8%)のに対し、年収300〜500万の人では、朝食を摂る人は74%で、摂らない人が21%であり、年収が低い群で統計学的に有意に朝食摂取率が低いという結果でした。

まさに、”子供時代に朝食をちゃんと摂ったかどうかがその後の人生を左右する”という衝撃的な結果です。子供が勉強しない、塾に行きたがらない、進学校に行けなかった等で成績が上がらないことを悩むより、朝ごはんをしっかり食べさせる方に労力をかけた方が良い結果が得られるかもしれませんね。
勿論、子供の頃から朝食をちゃんと摂ることが大事ですが、30歳過ぎても脳は発達することはわかっていますので、大人になってからでも遅くはありません。朝食を摂る習慣のある人は、仕事にやる気が出る、ストレスを感じにくくなる、規則正しい生活を送る、バランスのとれた金銭感覚がある等の好ましい傾向があるとのことです。

さらにこの朝食の効果は、米食とパン食を比較すると、米食の効果がより高いとの結果でした。また、米食とパン食で脳の表層の灰白質という神経細胞が存在する部分の厚みを比較すると、米食群で上側頭回、下前頭回、両側尾状核などの認知、学習・記憶、特に言語習得に関係する領域で有意に厚かったとのことです。栄養学的には、米食の方がパン食よりもグリセミックインデックスやアミノ酸スコアからも優れていて、脂肪含量が少ないため太りにくいともいえます。

また、パンには添加物の問題もあります。しっとり感を出すための臭素酸カリウム、ファットスプレッド、保存料としてソルビン酸、乳化剤などです。このうち臭素酸カリウムは発癌性があることが知られており、日本では臭素酸カリウムが最終的に製品に残存しないことを条件に使用が認められています。日本の製パントップメーカーの山崎製パンは、パンが美味しくなることを理由に、法的には報告義務はないものの、ホームページで最終製品に臭素酸カリウムの残留が安全基準を満たしていることを掲載しています。社会的責任の重い食品を扱う大企業として、この行為はとても好感が持てるのですが、使用していることを知ってしまうとあまり気持ちのいいものではありませんね。安全基準以下であるので気にしませんという方は、どうぞパンをお楽しみ下さい。

また、脳の領域の働きを調べるテストで、朝食のおかずの数とテストのスコアの間には正の相関があり、おかずの数が多ければ多いほど、脳機能が高いとの結果が得られています。朝ごはんにそんなにたくさんのおかずを用意する時間があるはずないという声が聞こえてきそうです。

私事ですが、私の家内は自分の母親の介護をしており、私のことはほったらかしで自分で朝ごはんを作らねばなりません。朝ごはんは、必ず米食で、納豆+キムチ+めかぶ+米麹を混ぜた物とインスタント味噌汁、前日の野菜サラダの残り、2日に1回卵かけご飯を食べます。ごはんさえ前日に炊飯器にセットしていれば、用意にかかる時間は5分程度で、パンが焼けるのを待つ時間程度です。朝ごはんを食べる習慣をつけさせることは子供への大きな、大きなプレゼントです。

乳児期の鉄欠乏症で脳の発育が障害される可能性

“鉄が不足すると貧血になる”というのは事実ですが、鉄が欠乏することによる症状は貧血だけではありません。特に生後6-7か月の時期は、貧血になりやすく、別名離乳期貧血とも呼ばれる貧血の好発時期です。特に母乳栄養児で多く見られ、母乳中の鉄含有量が少ないことが原因とされています。鉄欠乏の症状は、貧血だけでなく、脳の発達が障害される可能性を示唆する証拠が次々と蓄積されつつあります。鉄欠乏で貧血が起きるのは、鉄欠乏の最終段階であるため、血液検査で貧血がわかった時には、すでに発育途上にある脳では、かなり深刻な鉄欠乏状態にあると考えられます。
鉄欠乏の脳に対する影響は、動物実験では記憶に関係する海馬や運動調節に関わる線条体に構造変化が起こり、細胞レベルではオリゴデンドロサイトという神経線維の髄鞘化を促進する細胞に悪影響を与え、その結果、言語発達、発語の遅れ、知能低下、注意・運動・認知・行動面の機能低下、睡眠覚醒リズムの乱れに関係するとされています。しかもこれらの障害の一部は、鉄補充を行っても改善しない可能性が指摘されています。つまり、運動機能障害は鉄補充により改善しますが、行動異常は成人期まで持続する場合があると言われており、鉄欠乏症が起こる前に予防することが必要と考えられます。
しかし、現状では乳児期に対する貧血や鉄欠乏症診断のための検査は行われていません。
米国小児科学会では、母乳栄養単独の場合、鉄欠乏症予防のため生後4か月から1日1mg/kgの鉄剤を補充することを推奨していますが、わが国では検査の機会さえないのが現状です。私のクリニックでは7か月検診の際に、希望者の方に貧血検査を行っていますが、母乳栄養単独(+離乳食1-2回)の7か月児の約1/3に鉄欠乏性貧血が認められます。その場合、すぐに鉄剤投与を開始していますが、神経後遺症を予防するという意味ではより早期の鉄剤投与が必要と考えられます。日本小児科学会においても、米国小児科学会のような勧告を出してほしいものです。

腸内細菌叢を良くするとアレルギーが治る!?

最近の研究で、腸内細菌がアレルギー症状発症に深く関わっているという証拠が次々に明らかにされています。つまり腸内細菌叢(腸内細菌の集団で、お花畑に例えて、腸内フローラとも言います)が乱れて、善玉菌が減り、悪玉菌が増えるとアレルギーを発症するのではないかと考えられ始めています。アレルギーを抑える乳酸菌〇〇〇とか、時々テレビや雑誌で宣伝されているのを聞かれたことがあるのではないでしょうか。
実際、腸管内細菌叢の異常とアレルギー発症に関しては、花粉症の患者さんでは腸内細菌のフィーカリバクテリウム属の細菌が減少していることや食物アレルギーを発症する小児では、生後3か月時点での腸内細菌叢の多様性が低く、エンテロバクター属が多いいことが指摘されています。逆に、マウスを使った動物実験では、クロストリジウム属の腸内細菌を増やすと食物アレルギー発症を予防できる等多くの結果が蓄積されつつあり、将来的には食物アレルギーを抑える菌、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を抑える菌を同定して販売するすることを目標として、プロバイオティクスは今、医学の最もホットな話題の1つとなっています。
なぜ腸内細菌の異常がアレルギーの発症を起こすのかという話を理解していただくために、簡単な免疫の話をします。まずアレルギー反応を引き起こすのは、リンパ球という白血球の一部です。私たちの体内には、生まれつき、免疫を強めるリンパ球と免疫が行き過ぎないように抑えるリンパ球があり、このバランスが取れていることで、私たちは重い感染症にかからず、ひどいアレルギーにも悩まされずに生きています。この免疫を抑える方のリンパ球をTreg(制御性T細胞、ティーレグ) と呼んでいます。つまりアレルギーを発症する人はTregが少ないため、免疫反応の抑制が効かずアレルギーを発症すると考えられます。逆にTregを増やすことができれば、アレルギーを抑えることができると考えられます。現在のところ、このTregを増やすのに関わっているのが、腸内細菌叢の中で酪酸(らくさん)を産生する酪酸菌と考えられています。酪酸菌によって腸内で作られた酪酸は、腸の粘膜を通過し、腸管内のリンパ組織に働き、Foxp3という遺伝子の発現が増加した結果、Tregが増加すると考えられています。よく耳にする乳酸菌ではなく、酪酸菌です。全身のリンパ球は循環していますので、腸管内で増えたTregは体中に循環し、花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息などの症状を抑制してくれると考えられます。
では酪酸菌をおなかの中で増やすにはどうしたらいいのでしょうか。酪酸菌を多く含む食材を食べ、酪酸菌のエサとなる食物繊維をたくさん取れば、腸内で酪酸菌を増やすことができます。酪酸菌を多く含む食物といえば、ぬか漬け、ナチュラルチーズ、納豆等です。酪酸菌のエサとなる食物繊維のうち、特に水溶性食物繊維が酪酸菌のエサとなりやすいといわれています。水溶性食物繊維を多く含む食品には、海藻(わかめ、めかぶ等)、穀類(オートミール、そば、ライ麦パン)、野菜(ゴボウ、納豆、アボガド、ニンジン)などです。その他、運動も酪酸菌を増やす効果がありますし、ヨーグルト等の乳酸菌も酪酸菌を増やす効果があります。しかし乳酸菌自体は通過菌と呼ばれ、乳酸菌を取っても腸内で増殖せず、すぐに便の中に出てしまうため毎日取り続けなければならないとされています。乳酸菌は毎日取ることが勧められるのは、このような理由からです。ヤクルトは毎日飲まないと効果はありません。
近年、小児の患者さんのうちでアレルギー疾患をもつ方の割合は急速に増加しています。
3月から5月の春先には、患者さんの約半分位がアレルギーがらみの症状で受診されることも稀ではなくなりました。今、私たちの食生活は肉食が多くなり、野菜摂取、海藻摂取が不足しています。アレルギーとはほぼ無縁であった私たちの父母の世代は、玄米を食べ、野菜を食べ、おやつといえば蒸したイモやイリコで、家で漬けたぬか漬けを食べ、今よりも確実に多くの発酵食品と食物繊維をたべていました。その頃は、アレルギーが健康上の問題になることは、ほとんどありませんでした。日本人は欧米人に比べて、酪酸によってTregが誘導されやすいとするデータもあるようです。うちの子はアレルギーだからしかたないとあきらめる前に、もう一度、食生活を見直して、薬に頼らず、アレルギーを自力で改善するようにトライしてみてはいかがでしょうか?

写真は、私が毎朝食べている、納豆+めかぶ+キムチ+米麹を混ぜた食べ物です。
納豆は納豆菌(酪酸産生菌の一種です)、めかぶは水溶性食物繊維を。キムチは乳酸菌を、米麹は麹菌を多く含んでいます。

うちの子、もしかしたらコロナ?と思ったらすべきこと

多くの新型コロナウイルス感染症の説明を見ると以下のように書かれていることが多くあります。
“小児の新型コロナウイルス感染症の症状は、発熱、空咳が多く、鼻汁は少なく、嘔吐・下痢等の消化器症状がみられることもあります”。

このように言われても、“普通の風邪やん、何かコロナらしい症状はないの?”と言いたくなる方は多いのではないでしょうか。さらに付け加えますと、阪神の藤浪投手で有名になった“嗅覚障害、味覚障害”は小児では殆ど見られず、また海外で話題になったような川崎病の様な症状も、日本では報告されていません。つまり小児では、新型コロナウイルス感染症に特有な症状はなく、熱や下痢などの風邪症状があれば、ひょっとするとコロナかもしれないと疑うことが大事です。

新型コロナウイルス感染症を疑ったら、まずすべきことは、

  • 周囲の感染状況を確認することです。流行地に居住しているか、学校や保育園でクラスターは発生していないか、職場で感染者が発生していないか、などです。もし該当すれば要注意です。
  • お子さんの状態をよく観察してください。呼吸が苦しそう、顔色が悪い、食事をとらない、元気がなくぐったりしている等の症状があれば直ちに医療機関の受診が必要です。その際、周囲にコロナ感染症がいそうであれば、まず帰国者・接触者相談センターに電話をして下さい。どこの医療機関を受診すればいいかの指示があります。周囲に感染者がいそうになければ、かかりつけの小児科に連絡をして、直ちに受診して下さい。これらの症状は、新型コロナウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、その他多くの病気で起こりえる重篤な病気のサインですので、緊急の医療機関受診が必要です。
  • 比較的元気はあるが、熱が持続する、咳が続く、下痢が続くなどの症状がある場合も同様で、周囲に感染者がいそうであれば、帰国者・接触者相談センターに、そうでなければかかりつけの小児科に受診しましょう。感染防止のための、オンライン診療、電話診療も推奨されます。

ゴールデンウイーク前までは、症状が軽症であれば、診断方法がない(抗原検査キットがない、PCR検査が厳しく制限されていた)こと、有効な治療法がないという理由で、自宅で様子を見てくださいというのが、一般的な対応でした。しかし、現在はまだ一部の地域だけですが、抗原検査が行われるようになり、インフルエンザ検査と同様の方法で、30分で結果が出ます。また以前に比較してPCR検査も比較的簡単に行うことができるようになりました。このような状況の変化から、新型コロナウイルス感染症を疑ったら積極的に検査を行い、感染者を早期に発見して隔離を行い、感染拡大を防ぐという方針に変わりつつあります。

皆さんも“うちの子、もしかしたらコロナ?”と疑ったら、重症度に応じて、医療機関に早急にコンタクトを取り、医師が必要と認めた場合は、積極的に抗原検査、PCR検査を受けることをお勧めします。医療機関に行くのはコロナをもらいそうで怖いとお考えの方は、オンライン診療、電話診療を利用しましょう。
一人で判断せずに、まず医療機関にコンタクトを取ることが重要です。

小児の新型コロナウイルス(Covid-19)感染症について

6月1日に学校が再開されて約1か月が過ぎようとしています。学校で感染するのではないかとご心配の方も多いのではないでしょうか?小児の新型コロナウイルス(Covid-19)感染症についての情報が少ないことが不安の原因の1つであるように思います。そこで、日本小児科学会が出している小児患者の特徴を、一部改変してお知らせしたいと思います(改変するのは、一部専門的内容を含んでいるためです)。読んでいただければ、少しは安心していただけるのではないでしょうか。

  1. ① Covid-19患者の中で小児が閉める割合は少なく、その殆どは家族内感染である。
  2. ② 小児では成人と比べて軽症で、死亡例もほとんどない
  3. ③ Covid-19ウイルスは鼻咽頭よりも便中に長期間、大量排泄される
  4. ④ ほとんどの小児Covid-19症例は経過観察または対症療法で十分とされている
  5. ⑤ Covid-19罹患妊娠・分娩において母子ともに予後は悪くなく、垂直感染は稀である。しかし、新生児の感染は重篤化する可能性もある。
  6. ⑥ 海外のデータでは、学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しく、逆に医療従事者が仕事を休まざるを得なくなるためにCovid-19死亡率を高める可能性が推定されている。
  7. ⑦ 教育・保育・療育・医療福祉施設等の閉鎖が子供の心身を脅かしており、小児に関してはCovid-19関連健康被害の方が問題と思われる。

日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会

英国からのデータでは、1歳未満の小児の10%は重症化するというデータが公表されています。日本小児科学会の発表内容は、あくまで日本国内のデータに基づいたものです。
英国と日本では流行しているウイルス自体にも差がありますし、医療体制も生活習慣も違います。英国で小児例の10%が重症化するからと言って、現時点において日本で同じことを心配する必要は今のところありません。日本では小児の重症例が少ないことをありがたく思いながら、できるだけ生活の負担が大きくならないように、予防策を講じながら普通に近い生活をしていけばいいのではないでしょうか?

登校開始後、各地の学校で小規模なクラスターが発生しており、今後も発生が続くと思われますが、長期間の休校などの処置は、ほとんど有害無益と考えられています。(実際にクラスターが発生した場合は、保健所の指示に従うことになり、休校となる可能性もありますが、感染防止上あまり有効ではなく、社会生活上の不利益が大きいというのが感染症専門家の意見です)
小児科の外来には、頭痛、嘔気、腹痛などの症状や肥満の悪化を主訴に来院する小児患者の数が増えています。行政には、安全第一という考えに固執せずに、メリット、デメリットのバランスを熟慮した対応をお願いしたいと思います。

ブログ始めました

子供さんのヘルスケアについて、日常の診療の場で詳しくお話することが難しいため、ブログを始めました。

私は、大学病院で20年以上小児の白血病治療、移植医療に携わってきましたため、得意分野は、血液、感染症、免疫・アレルギーです。
今までの経験を活かして、何か皆様方の、関心が高いけれどもわかりにくいトピックスについて、わかりやすくお伝えしたいと考えております。
そこで、次回からマスメディアで報道されることが少ない、子供のコロナウイルス感染症について、わかりやすくお話ししたいと考えております。
宜しくお願いします。